(15)21歳と31歳

*注意事項*
ここから先には男女の性描写が含まれます。
話の流れとしては、飛ばして頂いても繋がりますので、苦手な方は↑の数字の*印が無くなる所まで飛ばして下さい。
18歳未満の方も同様です。
大丈夫、大好物、文句言いません!という方のみスクロールでどうぞ。
















































 あまりの衝撃に、一瞬目の前に星が舞った気がした。
 しばらく2人して、声も無く額を抑える。

「フェリシアーノッ・・なんの、つもりだ・・・」

 余程痛かったのか、うっすらと涙目になった男の顔をみて、フェリシアーノはだって、と笑った。

「ルーイが全然話聞いてくんないんだもん。なんか勘違いしてるし」
「かんちがい・・?」
 完全に毒気を抜かれた様な声で問い返されて、女性はそう、勘違い。と頷く。

「あのね、あのとき『ホント無理』って言ったのは、ルーイとするのが、じゃないよ。その・・オレ、初めてだし、ルーイは優しいし格好良いし、あのときは本当に、ドキドキしすぎてこのままじゃ死んじゃうと思ったの」
 言っていて恥ずかしさがこみ上げて来たのか、途中から視線をそらしてそんな事を言う女性に、ルートヴィッヒは言葉を失った。

「・・・・・・あのとき、って、お前・・まだ、キスしか」
「ずっと好きだった貴方にキスされて耳元で名前呼ばれて、しかも耳舐められたりとかしてドキドキしないはず無いじゃん!ルーイとセックスなんて一体何回夢に見たと思ってんの!?今だってこの体勢だけでもう濡れてきてるんだかんね!そ・・そりゃ、あの場面でストップかけたオレも悪いけど、告白したときにちゃんと言ったじゃん、キスも、それ以上もって。こうして、ルーイに求められて、嬉しくないはず、ない」

 頭突きの弾みに自由になっていた手で顔を隠し、耳まで紅くしてそんな事を言うフェリシアーノが、自分の下に居る。
(夢、じゃ、ないよな・・・?)
 さっき夢じゃ困る、などと言っていた事は棚に上げて、そんな事まで考えた。

 笑ってしまう程微かに震える手を伸ばして、顔を隠す細い腕をどかせば、涙に潤んだ琥珀が自分を見上げてくる。
 それだけで腰に血が集まる男の性を自覚しながら、そっと目の端に唇を落とした。

「すまん、フェリシアーノ。初めてだと、知っていたから、優しくしようと思ったんだがーー」
「ううん、こっちこそゴメン。ルーイのキス、優しかったよ。優しくしてもらったのに、恥ずかしくなっちゃったから・・」
「・・・・・・・・その場合、俺はどうすればいいんだ」

 優しくしたら、恥ずかしくなってストップ。
 最悪嫌われても抱くとは言ったが、惚れた女の初めてを貰うのに、優しくしないという選択肢はない。
 適度に、優しく?適度って何だ。どの程度を適度というんだ。誰か今すぐデータで示してくれ。

 思いも寄らない壁にぶつかって、疲れた様な顔をする男を、フェリシアーノは必死で見上げた。

「あの、あのね、ルーイ。オレ、我慢するから。恥ずかしくても、そのうち慣れるかも、しれないし。ルーイのしたいように、して。痛いかもしれないけど、一緒に気持ちよくなりたいよ。だから、その・・・初めて、貰って下さい」


 しばらく、部屋に沈黙が満ちた。
 時計の秒針が時を刻む音をしばらく奏でた頃、ふむ、という男の声が沈黙を破る。

「そうか、そうだよな。慣れれば問題ない。もしくは、恥ずかしいと思わないくらい、理性を飛ばしてしまえば・・・」
 至極真面目な顔でそんな事を言う男に、思わず顔が引きつったのもつかの間、
「ありがとう、フェリシアーノ。本番は痛いかもしれないが、精一杯優しくするから」
 一緒に、気持ちよくなろうな。
 え、や、ちょ、と慌てた様な声は、輝く様な良い笑顔で言い切った男の唇に吸い込まれた。


「ーーふぁ、あ・・・ん」
 あつい。
 まるで生き物の様なルートヴィッヒの舌に、口の中だけでなく体中を暴かれている様だ。
 いつのまにか着ていた服は取り払われて、ショーツ一枚でくみしかれている。
「ん、あっ・・!」
 ふにふにと揉まれていた胸の突起を、ぱく、と口にされて、思わず腰が跳ねた。
 じゅ、と音をたてて吸い上げる唇と、乳首を転がす様な舌の動きに、声が出るのを止められない。
「やっ・・るーい、それ、や、やだぁ・・」
 身を引こうとしても、背中にはシーツの感触。そして腰にしっかりと回された、たくましい腕。
 その力強さを認識しただけで、また背中がぞくりと粟立つ。
「あ、や、やぁ・・なに、これ・・っ」
 体の奥からわき上がってくる感覚は、自慰の時とは比べ物にならないレベルで、到底同じ物とは思えない。
 思わず怖くなってやだやだ、と首をふると、すかさず降って来た唇に縫い止められた。
「いや、じゃなくて、気持ち良い、だ」
「ーーふぇ?」
 頬を両手で包み込んで、子供に言い聞かせる様に言った男の言葉に、フェリシアーノは二、三度瞬きをする。
「言ってごらん、フェリシアーノ。ほら、気持ち良い」
 言葉と同時に乳首をきゅ、とつねられて、肩が震える。
「あっ・・き、もち、いい・・!」
 言われるがまま自分の口からそう言った途端に、今まで持て余していた感覚が全て、一瞬で「快感」に上書きされた。その、爆発的な重量。
 気持ち良い。もう、そうとしか感じられない。
「い、いぃ・・ルーイ、きもち、良い!あ、っあぁ・・」
「いい子だ、フェリシアーノ」
 そこら中を撫でられて、舐められて、もう下着の中は大変なことになっている。でももう、どうしようもない。
 すり、と無意識に刷り寄せた太ももを伝って、男の指がその部分へたどり着いた。
「ーーあぁ・・!」
 布の吸収力を超えた分の液体が、長い指を濡らす。その存在を感じるだけで、じゅん、と溢れてくるのを止められない。
 脱がされたショーツが、しっとりと糸を引いた。
「凄いな・・・」
 思わず口から出た、という様な男の声に、フェリシアーノはぎゅ、と目を閉じる。
「だ・・だって、きもちいん、だもん」
 蚊の鳴くような声でそう言った途端、うめく様な声がして、息も付けないくらいのキスが降ってきた。
 舌を絡めて、流し込まれた唾液を飲み込んで。
 夢中になってキスしていると、少し冷たい指が、そこに入って来た。その圧迫感に、思わず眉を寄せる。
「痛いか?」
「っん・・だいじょ、ぶ。いたくはないよ」
 親指でクリトリスを撫でられると、背すじがぞくぞくしてしまう。
 与えられる快感に夢中になって声を上げている間に、指は二本、三本と増えて行って。
 ぴちゃぴちゃという濡れた音と、自分の中の圧迫感と、目の前の人の体温と声と汗に、今までとは違う感覚がわき上がってくる。

 じれったい。

 はやく、そう言いたいのに、口からはもう意味の無い声しか出ない。
 その事すらもじれったくて、フェリシアーノは夢中で手を伸ばした。
 自分の何倍も太い男の首に腕を回して、しがみつく。弱い自分の力でもなんなく金髪を引き寄せられたのは、相手が併せてくれたから。それが嬉しくて、もどかしくて、丁度目の前に降りて来た耳元に唇を寄せた。
 慌てた様な男の声を近くに聞きながら、耳ともみあげの間にキスをして、なんとか「すき」と囁いた、瞬間。
「反則、だろっ・・!」
 聞いた事も無いくらい切羽詰まった声がして、ぬくもりが遠ざかった。
 同時に入れられていた指も抜かれて、引き止めようとする間もなくぐい、と足を曲げられる。
 胸に付くんじゃないかという程開いて曲げられた足を支えたルートヴィッヒが、ギラギラした目で自分を射抜くのを感じて、思わずつばを飲んだ。

「いいか?フェリシアーノ」
 すこしかすれた、低い声。こんな声で聞かれて、Noと言える人なんているはずない、そう思いながらこくりと頷く。
 ふ、と笑った菫色の瞳に目を奪われていると、「痛かったら噛み付いていいから」という言葉と同時に、熱の塊がぐ、と押し付けられるのを感じた。

 そして襲ってくる圧迫感と、痛み。

「いっ・・あ、あぁ・・!」
 これでもかってくらい濡れたし、指も入ったし、初めてだけど大丈夫なんじゃないかな。
 そう、希望的観測を持っていたフェリシアーノの予測は、あまり当てにならなかったようだ。
 それでも、覚悟していたよりもずっと、痛みは少なかった。
 
 少しずつ奥へ奥へと進む間も、愛撫の手が休まる事は無い。
 目の前の人から与えられる快感を、ふわふわした頭で夢中になって追っている途中で、時折思い出した様に痛みが走った。
 小さな声を上げながら、繋いだ手を握りしめていると、頬に口づけが降りて来て、男の動きが止まる。

「フェリシアーノ、平気、か・・?」
 汗で額にはりついた前髪を、ルートヴィッヒの長い指がゆっくりとすいてくれる。
 その感触に頬を緩めて、女性はこくりとうなづいた。

「ぜんぶ、はいった?」
「ああ」
 短く返した肯定の言葉に、ふわりと微笑むその笑顔。その上、

「・・・ありがとう、ルーイ。うれしい」

 そんな事を言うものだから、気がついたときにはその柔らかな体を思い切り抱きしめていた。
「あっ・・ん!」
 抱きしめられた拍子に、胸の突起が男の胸板にすれて、フェリシアーノの口から高い声が上がる。
「フェリシアーノ・・フェリシアーノ、ありがとう、好きだ、愛してる」
 耳元で囁く声にも、あ、あぁ、と、小刻みな声が返ってくるばかりで。
「動いて、良いか」
 そう問うた声に、フェリシアーノはこくりと頷いた。

 それから先の事は、よく覚えていない。
 熱くて、痛くて、でもふわふわ幸せで、必死にルートヴィッヒの名前を呼んでいた気がする。
 下から激しく突き上げられ、汗で滑る手で何度も男の背を握り直した。
 ルートヴィッヒが低く声を上げたのと同時に、自分の中で熱がはじけたのを感じて、わき上がって来たのは、歓喜。

「・・はぁ、ルーイ、気持ちよかった?」
 先ほどまでの激しい動きが嘘の様に、静かにぎゅう、と抱きしめられて、フェリシアーノは小さな声でそう問うた。
「あぁ。最高によかった、幸せだ。・・・ありがとう、な。痛かっただろう?」
 出来る限り気をつけたつもりでも、やはり初めてで痛みを感じないはずがない。
 すっかり乱れてしまった髪を梳いて、腕の中の女性の頬に手をあてれば、すり、とよせられる柔らかな頬。
「そりゃ、ちょっとは痛かったけど。ーーでも、凄く嬉しかったよ。ルーイが、私を欲しいって言ってくれて」

 これからも、よろしくね。旦那様。

 ふわり、と笑ったその笑顔に、腰が疼くのを感じ、男は急いで身を起こした。
 一言かけてから入ったままだった自身を引き抜くと、付けていた透明な袋の口を縛って、ベッドサイドのゴミ箱へ放り投げる。
「いきなりそんな顔するな。・・・年甲斐もなくまた勃ちそうになったぞ」
 そう良いながら、ばふ、と女性の隣に倒れ込んだルートヴィッヒの耳に、そういえば、と声が掛かった。
「始めは子供が出来ても、とか言ってたのに、ゴムつけてくれたんだね」
 ちょっと意外、と言わんばかりの声がそう言って、男は本気で苦笑する。
「あのな・・・結婚する相手とはいえ、まだ式も上げてない、しかも惚れた相手の初めて貰うのにいきなりナシでやるはず無いだろう」
 それに、と男の声は続く。

「子供の事とか、これからの人生計画をちゃんと2人で話し合ってからだろ、そういうのは」

 至極真面目な顔でそう言い切るルートヴィッヒに、フェリシアーノは思わず抱きついた。
「そういうとこ、ルーイらしくて好きだよ!」
「・・・どうも」
「それだけ私との未来を真剣に考えてくれてるって事でしょ?ありがとう、嬉しいよ」
 ちゅ、と音を建てて頬にキスを送れば、ルートヴィッヒはふと笑う。
「これから忙しくなるな。結婚式までに、色々話し合うべき議題が山積みだ」
「えー・・・結婚式は楽しみだけど、山積みはやだなぁ・・・」
 ちょっとずつ片付けて行こうよ。眉根を下げてそういうフェリシアーノにも、ルートヴィッヒは首を横に振る。
 そしてにやり、と笑うと、女性の耳元に口を寄せた。

「新婚初夜に嫁を直接堪能するには、話し合いをそれまでに終わらせておく必要があるからな」
 悪いが、そこは譲れない。

 少し身を引けば、真っ赤になった女性の顔が目の前に在って。
「〜〜〜なんなのもぅ、ルーイがエロいー!」
 私の知ってるルーイと違うー!そう言いながら胸板を叩いてくる力の、なんと可愛らしい事。
「・・・エロい俺は、嫌か?」
 わざと神妙な顔でそう聞けば、言葉につまった後返ってくる台詞は予想通り、

「好きだけど!」
「それは良かった。俺も好きだ」
「それは私が?それともエロい自分が?」
「両方」
「やっぱり私の知ってるルーイと違うー!」

 半ば涙目になってそう言う婚約者の唇を、じゃあこれから沢山知ってくれ、と言って塞げば、抵抗など無いに等しく。
 唇を話して微笑み合う2人の背後で、街の灯りが静かにきらめいていた。