親愛なるルーイ兄へ
こんにちは。お元気ですか?こちらは相変わらずです。
早速ですが、次の帰省の時期が決まりました!今回は誕生日をルーイ兄と過ごせそうです!卒業前最後(になるといいのですが)の誕生日なので、どうしても一緒に祝って貰いたかったのです。ごねたかいが有りました。
その誕生日のメニューについて、なのですが、リクエストしてもいいですか?色々食べたいものがあって、とても迷ったのですが、あまり作りすぎても二人で食べるのは大変なので、頑張って絞り込みました。
メインのパスタとピザは、私が作ります。私の誕生日ですから、私のレパートリーの中で一番美味しいものを、ルーイ兄に食べて貰いたいです。ワインはおまかせします。私はまだよく解らないので、飲みやすくて美味しいのを選んでください。そしてデザートなのですが、ルーイ兄のリンゴのケーキが食べたいです!是非食べたいです!
覚えていないかも知れませんが、私が家に来てから初めて作ってくれたケーキは、リンゴのケーキでした。ローデリヒさんのチョコレートケーキもとても美味しいのですが、私にとっては一番はルーイ兄のケーキです。
というわけで、ケーキを焼いてください。楽しみにしています。
クラリネットの方も、少しずつですが自分でも満足いく演奏が出来ることが増えてきました。あれもこれも、理想通りの演奏とは行きませんが、精一杯の気持ちを込めて吹くと、それに答えてくれる楽器があるという事に、喜びを感じます。
この学校に来られて、本当に良かった。
ここに来たからこそ出来た経験が、沢山ありました。出会えた人たちが沢山居ます。こんな事を言うと怒られてしまいそうですが、10年前のあの日、ルーイ兄に連れて行ってと言った自分を誉めてやりたいです。
貴方に出会えて、本当に幸せです。これからもよろしく。
次に会える日が待ち遠しい フェリシアーノ
(7)intermission
「会えるのが待ち遠しい、か」
郵便受けから取り出した手紙を、廊下を歩きながら開封して読んでいたルートヴィッヒは、たどり着いた書斎で、自分の椅子へと腰を下ろした。
その手の中の紙に書かれた言葉を、指先でなぞる。
「・・・もう、十年になるんだな・・・」
姉夫婦の経営する孤児院で、あの榛色の塊を抱き留めてから、十年。女だと解ったときには狼狽えてしまったが、同居人となった子供は、自分の人生にとっては無くてはならない存在だった。
周囲には、いい年をして結婚もしないのか。子供など引き取るから婚期を逃すのだ、と言う人間もいた。現に、子供が居ると言った途端興味を無くしたように去ってゆく女性も居なかった訳ではない。
それでも。
あの子を手放すという選択肢は、ルートヴィッヒの中には一度だって有ったことなどない。
「おはよう」
「いってきます」
「ただいま」
「いただきます」
彼女とかわす挨拶の一つ一つが、ルートヴィッヒの日常に光を運んだ。
今は、離れていても。
音楽学校は4年制だ。学業も頑張っている様だし、順調にいけば来年は卒業、そうしたら。
「また、一緒に暮らそう、フェリシアーノ」
手紙の向こうの人に語りかけるように微笑んで、男はもう一度その名前を指でなぞった。