ゲーム「リーズのアトリエ」のパロディです。
いつの間にか大変な額の借金を背負うことになった一国の王女が、隣の国に出奔して錬金術でがめつくお金を稼ぐ借金返済ゲームだよ(大体本当)
もちろんカプは独伊です。
キャストとしては、リーズ→伊、隊長→ドイツ。
性懲りもなく、伊が女の子です。
女体化ダメ、絶対。という方はこの場でリターンプリーズ。
女体化オッケーどんどこーい、な素敵なお方はどうぞ*
「うおぉ・・・・まずい・・・」
美しい石垣と、木の骨組みを持つ建物たち。
石垣の向こうに垣間見える、色とりどりの花の咲き乱れる小さな庭。そして、馬車の轍と、人々の長年の営みが磨き上げた石畳。
観光客が喜んで絵葉書を買い求めそうな、そんな景色の中。
「ここ、どこ・・・?」
途方にくれた顔と声で、フェリシアーナは肩を落とした。
フェリシアーナ・ヴァルガス、絶賛迷子中である。
「おっかしーなー・・あの道真っ直ぐで大通りに戻れるはずだったんだけど・・・」
天気の良さに誘われて、まだ良く知らないこの街を探検しに行こう!と思い立ったのが、今朝のこと。
大通りを目印に、そこからちょこちょこ小道に入る、という進路をとっていたはずなのだが、途中見事なガーデニングを公開している通りを見つけ、思わず足が向いてしまったのが悪かったようで。誰か通りかかった人に道をきこうと、大きめの道を歩いてみるものの、こういう時に限って人っ子一人通らないという事実に、フェリシアーナの元気はなくなる一方だ。
「はー・・お腹すいた・・・お昼サンドイッチ持ってきててよかったよー」
カバンの中身はサンドイッチと飲み物と少しの現金。昨日とったばかりのライセンスは財布と共に身につけている。ちなみに財布と小銭を分けることや、大事なものは身に付ける事など、普通の王女さまが知ろうはずもない事は、もちろん全て傭兵上がりの母仕込みである。
兎にも角にも腹が減っては散策できぬ、と、サンドイッチを食べる事にして、フェリシアーノはぐるりと視線を巡らせた。
丁度突き当りの向こうには、柵で囲まれた緑が見える。公園の様なその雰囲気に、少女はいそいそと足を向けた。
「どうせなら、素敵な公園でゆっくりご飯食べて休憩、だよね!」
柵の前まで来てみると、公園(仮)は軽く3ブロック分の敷地を有する広さで、道沿いにその先を見ると、入り口のアーチが1ブロック程離れた所に見て取れる。
ぐるっと回らずにすんだ事に安堵して、フェイリシアーナは久しぶりに意気揚々と歩き出した。
「・・・・・・・・あれ?」
歩き出した、のだが。
公園の入り口と思っていたそのアーチの中には、制服を纏った長身の男性が、直立不動で立っている。
(あれは、もしかして、もしかしなくても)
実家の前に立ってた「衛兵」的な何かの臭いがプンプンしますよ!うわぁん!・・・という事は、この緑は公園とかじゃなくて、どっかのお偉いさんの建物ですかそうですか・・・。
折角素敵な公園でご飯だと思ったのに・・と、悄然として踵を返した彼女に、背後から声がかかった。
「待て、そこの者」
「は、はい!?」
木々のざわめきとかすかな生活音の中、まっすぐに通るここちの良いバリトンに、思わず肩を揺らして振り返る。
「な、なんでしょうか」
別段やましいことは無いのだが、どうしても実家(王宮)に居た頃抜けだそうとして捕まった記憶が頭をよぎり、及び腰になってしまう。
(私は一般市民、一般市民!なにも悪いことしてない!)
頭の中で念仏の様に唱えながらその場に佇んでいると、衛兵らしき男は少し間を開けて口を開いた。
「間違いだったら失礼。あちらの筋から来た時には、道に迷っている様にみえたが、その、大丈夫か?」
帰りの道はわかるのか、と続けるバリトンに、フェリシアーナは「あぁ!」と思わず声を上げる。
「忘れてました!すみません、ここ何処ですか?」
「忘れてたって・・自分が道に迷っていたのを忘れていたのか?」
精悍な顔に、「大丈夫かこいつ」という台詞がありありと浮かぶのを見て、少女は慌てて手を振った。
「ち、ちがうんです!ちょっと、道に迷ったので、まずは腹ごしらえしようと思って!てっきり公園か何かだと思っていたんですけど、ここ、違うんですよね?」
ちら、と男の背後に広がる整備された空間に目をやり尋ねると、男は綺麗に整えたオールバックの金髪を縦に揺らしてうなづいた。
「ここはヘクセンリッターの本部だ。一般人の立ち入りは基本的に許可されていない」
「へくせんりったー?」
始めて耳にする単語に、フェリシアーナは首を傾げて見せる。そんな彼女の反応に、相手はすみれ色の切れ長な瞳を少し大きく開いて、「旅行者か?」と尋ねた。それには首を振って答える。
「つい先日この町に引っ越してきたんです。あ、私はフェ・・フィアナ。フィアナ・ヴァルガスって言います。あなたは?」
「ルートヴィッヒだ。ルートヴィッヒ・バイルシュミット。そうか、まだ来たばかりだから道がわからなかったんだな」
納得した、とうなづく相手には苦笑するしかない。
「天気が良いから探検しようと思って、綺麗なお庭を見て歩いてたら、いつの間にか大通りを見失ってしまいまして。それで、ヘクセンリッターって言うのは、どういう・・?」
「早い話が魔法を剣に乗せて使う騎士団だ。この町では周囲のモンスターに対する警備と、町の治安を請け負っている」
どこか誇らしげに語られた内容に、フェリシアーナはふむふむ、と頷いた。
「えっと、お仕事ご苦労様です。これからもよろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば、相手はこちらこそ、と苦笑して会釈する。
そうしてその場に満ちる、しばしの沈黙。
「で?」
しびれを切らせた様な声に、何か失礼な事をしただろうか、と顔をこわばらせたフェリシアーナだったが、続いたセリフに思わず手をうった。
「君が、会話の中で一つの話題しか記憶していられない性格なのは、よくわかった。家はどこだ」
「おぉ!そうでした・・・ってその残念な三歳児を見るような顔やめてください、私だっていつもこうな訳じゃないですよ!初めはちゃんと目印を決めて、大通りを見失わないように歩いてたんですから」
「結局迷った上に、迷子であるということ自体を忘れている状況は変わらないと思うが」
異議あり、と上げた声にも、淡々と返されてしまってはぐうの音も出ない。実際には「ぐぅ」と押し殺した声が出たのだが、まあいい。
「だって、お庭が綺麗だったんですもん。まだお昼だし、家は広場の北の方なので、ご飯食べてから広場か大通りに出れればと思って」
「腹ごしらえをしようと思ったら、公園だと思っていた所がここだった。それで、何処に行くつもりで立ち去ろうとしたんだ?」
心底呆れたような声と表情に、フェリシアーナは小さな声で応える。
「べ、別の公園とか、ご飯が食べられそうなところへ」
「そうしてまた知らない道に入って、ますます帰れなくなるとは考えなかったのか?」
「うぅ・・・お昼の事で頭がいっぱいだったんです・・・もう、いいじゃないですかそんな事!それで、大通りって、どう行ったら出られます?」
顔を赤くして拳を上下させつつ、半分逆ギレ状態で放った台詞には、意外な所から意外な反応が帰ってきた。
「あー無理!もう無理!なにこの嬢ちゃん面白すぎんだろ!」
突如として男の背後から響いた爆笑と、そんな台詞に目をやれば、銀髪の男性が鉄製の門の向こうで腹を抱えて笑っている。
身に纏っている制服はルードヴィッヒと同じものなので、ヘクセンリッターの隊員ではあるのだろうが。ぽかん、とした顔をしていたフェリシアーナは、ルードヴィッヒの台詞に思わず目を瞬いた。
「その馬鹿笑いをやめてください、指揮官」
「指揮官!?」
だって、こんなに若いのに!?思わず上がった声に、あっさりと鉄の門を開けて出てきた男はにやりと赤い瞳を笑みの形にかえて、
「指揮官、じゃなくてお兄さま、でいいんだぜ?現隊長どの」
そう言った。苦い薬を飲んだ様な顔のルードヴィッヒとは対照的に、フェリシアーナはあぜんとするしか無い。
「た・・隊長って・・騎士様、うぁ、その」
騎士団の長、というと、実家で兄と共にこてんぱんに訓練でのされた記憶しかない。
(あれ、おかしいよね私一応お姫様なのに)
それでも実力はピカイチだし、忙しい合間に自分達を鍛えてくれているのはわかっていたので、何も言わず訓練を受けていたのだが、やはり苦手意識は残るもので。目の前に立っている青年が、隊長を務めているという事実にも驚いたがそれより。
(隊長に迷子の心配させた上に逆ギレまでしちゃったよ・・・ないわ・・・ないわ私・・・!)
自分の所業を思い返して、フェリシアーナは嫌な汗を流した。
しかし銀髪の若い指揮官は、そんな挙動不審な様子にもツボを刺激されたのか、さらに笑い声を上げる始末で。
「いい加減にしてください、指揮官!まだ交代の時間じゃないでしょう、ここへは何を?」
ついに苛立ちを顕にしたルードヴィッヒに、男はひーひー言いながら笑いを治めて、言った。
「何ってそりゃ、上から可愛い弟が見えたと思ったら、何やら楽しげに若い女の子と話してるじゃねぇか。こりゃ見に行かねーとと思ってだな」
「意味がわかりません今すぐ戻って仕事してください」
「バッカお前、今から俺様がここで仕事すんだよ。そんでお前もお仕事だ」
「門番は一人で十分ーー」
頭上の言い争いに完全に置いて行かれた形で、金と銀の髪を交互に見ていたフェリシアーナを、紅の瞳が捉える。
「お嬢ちゃん、道に迷ったんだろ?こいつ貸すから、送って行ってもらいな」
「は?」
「え?」
意表を突かれたような声は、二つ。目の前のフェリシアーナと、親指で「こいつ」とさされたルードヴィッヒからだ。
「指揮官、でもまだ交代の時間が」
「何いってんだ馬鹿野郎、市民が困っている時に門なんか守ってる場合か。お前の性格上、だれかここに立ってねーと気になるだろうから、俺様が立っててやるって言ってんだ。つべこべ言わず送ってこい、さもないとこの嬢ちゃんまた道に迷って、迷ったことも忘れてほっつき歩いて、夜まで家に帰らねぇぞ」
「いやさすがにそこまでは」
思わず小さな声で抗議の声をあげたが、当然の様に黙殺。
言われた方のルードヴィッヒはといえば、ちらり、と少女を見やって、深い溜息をついて、
「行ってまいります」
綺麗な、本当に綺麗な敬礼をしたのだった。
→次話
やっとドイツさん出てきたです。
続き頑張って書きます ( ー`дー´)キリッ
13.11.18 伊都