ゲーム「リーズのアトリエ」のパロディです。
いつの間にか大変な額の借金を背負うことになった一国の王女が、隣の国に出奔して錬金術でがめつくお金を稼ぐ借金返済ゲームだよ(大体本当)
もちろんカプは独伊です。
キャストとしては、リーズ→伊、隊長→ドイツ。
性懲りもなく、伊が女の子です。
女体化ダメ、絶対。という方はこの場でリターンプリーズ。
女体化オッケーどんどこーい、な素敵なお方はどうぞ*
うららかな春の日差しが、そこはかとなく眠気を誘う日の午後。
大きなアトリエの窓から差し込む光の下、フェリシアーナは鞄の中身をチェックしていた。
「家の鍵、数日分の食料、帆布、応急処置の為の薬、筆記用具、あとお金と身分証明書(ライセンスカード)、っと。水を入れるためのアイテムも持ったし。うん、だいたいこんなもんかな?」
日が落ちるとまだ少し肌寒いため、防寒のマントを身につけ、近所の雑貨屋と武器屋が一緒になっている店で購入した、女子供にも使いやすい短剣を腰にさす。ちなみに近所の店、というのは、雑貨屋の店主の可愛らしさと、その兄である武器屋の店主の目付きの悪さに驚かされた店だ。ちなみに店主作成の銃は、撃つと「ダショーン」という音がする。
「早く錬金術でモンスターが寄って来にくくなるアイテムとか作れるようになりたいなぁ。そうすれば森を通るのも楽になるだろうし・・」
兄と共に森に放り出された幼いころの事を思い出して、少し遠い目になったところで、いやいや、とフェリシアーナは首を振った。
「あの日々があるからこそ、今があるんだよね!まずは湖の水と、ほうれんそうと、出来ればほわ毛くらいゲットしてこよう」
錬金術の基礎の基礎、蒸留水を作るための材料を、しばらくの間保つくらいは取ってこようと、アトリエの扉に手をかけた、丁度その時だった。
「わぁ!」
からん、からん。
突然外から押し開けられた扉に、ぶつけそうになった手をあわてて引っ込める。
ふわりと鼻をくすぐった春の花の香りを乗せた風に、ぱちくりと扉の方を見やれば。
「悪い、怪我はないか?ノックをしたのだが、返事がなかったものだから・・」
ドアノブに手をかけたまま、こちらを気遣うような目をする、ヘクセンリッターの隊長が立っていた。
「き・・騎士様!?あ、いや、大丈夫ですケガはないです。・・その、何か御用ですか?」
驚いたせいなのか、それとも目の間に立つ人の威圧感のせいなのか、心臓がいつもより早く拍を打っている。それをごまかすように、へらりと笑って問えば、相手は何かを言いかけて、視線を少しあたりに巡らせ、ようやく口を開いた。
「出かけるところだったのか?」
装備を指さして問われると、フェリシアーナは頷くしかない。
「え・・えぇ。ちょっとそこの、湖まで、錬金術の素材をとりに行こうかと。あの、2日3日留守にするので、何か御用であれば今お聞きしますけど」
「2日3日!?一人で!?」
突如発せられた大きな声に、思わずビク、と肩が揺れる。一体何故突然そんな大声を、と見上げた相手の顔を見て、フェリシアーナは思わず「ひぃ!」と小さく悲鳴を上げた。
(ちょ・・怖い怖い怖い顔!かお!!騎士様がそんな怖い顔してたらだめでしょ!折角イケメンなのにだいなしっていうかマジでこわい!私なにかした!?)
視線だけで一人二人殺せそうな顔をして、こちらを睨みつけるルートヴィッヒは、正直王宮でしごかれていた時の近衛隊長の比ではなく怖い。
「え・・なんでそんな怒ってんスか・・?まさか今、街から出ちゃダメとかないですよね?」
「ダメに決まってるだろう!馬鹿なのか?お前本気で馬鹿なのか?」
「馬鹿って二回も言った上にお前よばわり!ちょっとしっかりしてて格好いいからって、そんなに年変わんないのにひどい!」
「年齢と見た目は関係ないうえに馬鹿に馬鹿と言って何がわるい」
「ひ、ひどい!そりゃちょっと情報収集しそこねてたけど、昨日の時点では街道閉鎖の情報なんてなかった!」
「一人で街から出て、二、三日うろついて、無事に戻ってこれると思ってるのか?自分の能力を過大評価し過ぎな上に、楽観しすぎだろう!なんで一人でいこうとする!」
「・・・へ?」
「・・・・封鎖?」
お互い言いたいことを言った後で、それぞれの台詞に疑問符を浮かべる。
先に立ち直ったのは、フェリシアーナの方だった。
「えーと・・・あの、街道閉鎖、されてるんですよね?だから、街から出ちゃダメだって・・?」
おそるおそるそう問えば、相手は二つ瞬きをして、
「はぁーーーーーーーー」
顔の半分を、その大きな手で覆い、深い溜息をついたのち、
ありえない、本気なのか俺、いや迷子だから気にかかるだけだ、そうだそうでないと、などとブツブツつぶやいてから、ようやく
「街道は、閉鎖されていない。街から出る事は、可能だ。ただ、君が一人で行くのには賛同しかねるという意味だ」
そんな事を言った。
言われた方のフェリシアーナはというと、首を傾げるしかないわけで。
「いや・・一人ではダメとか言われても、湖すぐそこだし。今までも何回か行ってますし。まぁ日帰りでしたけど」
「あのあたりは弱いとはいえモンスターも出るだろう!」
「逆に出てくれないと困るっていうか、モンスタードロップのアイテムも目当てっていうか」
「それで万が一ケガでもしたらどうする!」
「いや、私逃げ足だけは早いんで大丈夫。体力開腹のお菓子も、結構作ってあるんで」
「迷子になるだろ!」
「だから、もう何回か行ったことあるとこで迷子になんか、なりませんて。何なんすかもう、ガキンチョじゃないんだから、大丈夫ですよ。そもそも一緒に行ってくれる人がいないですもん」
何度か素材集めに同行してもらったアントーニョは、今日は別の場所に行っていて不在だ。日をまたいで付き合わせるのも悪いと思っていたので、どうせ一人で行くのならばと泊まりがけの準備をしていたのだ。そう言うと、未だアトリエの扉の外に立ちっぱなしだった隊長が、とんでもないことを口にした。
「俺が行く」
「・・・・・・は?えっと、なんて?」
「だから、俺が同行すると言った。行く場所は湖か?他に行く所があるのなら、連れて行ってやる」
「いやいやいやいやいや!たかが素材集めにヘクセンリッターの隊長をお借りするわけには!ていうか仕事は」
思わず千切れそうな勢いで両手を振って言うと、開き直った様なルートヴィッヒが、問題ないと言う。(問題あるでしょ!)
「最近外の巡回に全く出ていなくて、身体が訛っていたところだ。それに、指揮官から君の様子を見てくるように、困っていたら助けになれと言われて来たんだ。外の見回りは数日帰らなくても問題ないし、今日は休暇を申請してある」
「なにそれ準備よすぎ!じゃなくて、休暇ならもっとほら、したいこととか買い出しとか、色々あるでしょうに」
「したいことが出来た。行くぞフィアナ」
「・・っ!」
何なんすかアンタ、さっきまでお前とか君とかだったのにイキナリ名前呼んだ上に手を差し伸べちゃうとかなに、私の心臓止めたいの?そうなの?私死ぬの?
末っ子なだけあって、リードしてくれる年上に弱い自覚のあるフェリシアーナ。しかもそれをしているのは若くて体格のいい(ちょっと顔は怖いけど)イケメンな騎士様である。これにトキメかずして一体何にトキメクというのか!乙女ぞ!我、乙女ぞ!? などとおめでたい思考が頭のなかを駆け巡り、結果顔を赤く染め上げてパクパクと口を開け閉めするだけの物体に成り果てた。
そのすきに、相手は問答無用で腕を引いてアトリエからフェリシアーナをつれだし、手にしていた鍵で勝手に施錠し、ヘクセンリッター本部に立ち寄り、気がついた時には街の出口まで来ていたのだから、ショックもひとしおである。
「・・・はっ!?あれ!?私、なんでこんなとこに?」
「やっと戻ってきたか。お前は身体だけじゃなく頭の中身まで迷子になるんだな」
飄々とした声がして、隣を仰ぎ見れば、
「え・・ちょ・・たいちょー!?」
「今は休暇中だから、職名で呼ばなくてもいいし、そんな大声を出さずとも聞こえている」
「いやいやいやいや!だから、たかが素材集めにヘクセンリッターの隊長を「その台詞はさっきもきいた」」
「聞いただけじゃん!聞き入れてないじゃん!確かにたいちょー来てくれるなら見の安全は万全だけど、あまりにも恐れ多いし申し訳がたなない!」
「うるさい、行くぞ。あと何に申しひらきするつもりだ」
「ぐぇ!ちょっ、首しまる!ギブギブっていうか私おんなのこ!女の子だよたいちょー、もっと優しくあつかって!」
襟首を掴まれて連れて行かれそうなその体勢は、はたから見たら完全に誘拐犯である。
「その自覚があるなら一人で森だの何だのうろつくな。ほら、手」
「・・・・・・・・ちなみにその、手というのは、甘酸っぱい理由からではなく・・」
「迷子防止に決まってるだろう」
「デスヨネー・・・」
もういいよこんなに人の話聞かないんだから、敬わないよタメ語で話すよばかやろー。
思わず国にいる兄の口癖が転がり出た後で、恐る恐る隣をちらりと見ると。
(〜〜〜〜〜〜〜ムリ!無理!!しぬ、悶え死んでしまう!!なんでそんな嬉しそうなの!!仏頂面はどこいったのカムバック仏頂面!!!)
フェリシアーナの気力をガンガン削る、わずかに口角を上げたルートヴィッヒの顔があった。
「あぁそうだフィアナ」
「へぇい」
「言っておくと、男とふたりきりで野宿するのに『身の安全は万全』というのは、賛同しかねるな」
うららかな街道に、声にならない悲鳴が響き渡った。
→次話
隊長が連れ歩けるようになりました(ゲームではもっと後からですけど/笑)
そしてドイツがなんか良くわかんない感じに開き直った・・どうしてこうなった・・・でもそんなドイツも好きだ(逝け
14.03.03 伊都