ゲーム「リーズのアトリエ」のパロディです。
いつの間にか大変な額の借金を背負うことになった一国の王女が、隣の国に出奔して錬金術でがめつくお金を稼ぐ借金返済ゲームだよ(大体本当)
もちろんカプは独伊です。でもドイツまだ出てこない(おい)
キャストとしては、リーズ→伊、隊長→ドイツ。

性懲りもなく、伊が女の子です。
女体化ダメ、絶対。という方はこの場でリターンプリーズ。


女体化オッケーどんどこーい、な素敵なお方はどうぞ*
























「はいじゃあ、ここにサインして」

 差し出された書類を、少女は親の仇を探すかのごとく、指で文字を追う勢いで確認する。
 その細かさに、不動産屋のおやじは少し嫌な汗をかいた。
 たっぷり時間をかけて確認した後、フェリシアーナは名前の欄に「フェリシアーナ・ヴァルガス」とサインする。ヴァルガスは母が昔属していた傭兵団の名だ。
「どうも。これでこの家はお嬢さんのもんだ。そいじゃあね」
 サインを確認して、不動産屋はやけにそそくさと家を後にした。
 残されたフェリシアーナは、自分の後ろに立つ家を振り仰ぐ。

「今日からここが、私の家、か。ーーーさぁ、稼ぐぞー!!」
 
 年頃の少女のかわいらしい声で言われた、かわいらしくない台詞が、青空に響き渡った。





 稼ぐ、とは言ったものの、と、ひとまず掃除を終えたフェリシアーナは息をつく。
「何かこう、足のつかない、実入りの良い仕事ってないかなー」
 王族の台詞とはとても思えない台詞を口に出した時だった。

 突然、家の扉が勢い良く開き、日焼けした肌の男が姿を表した。


「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


 無言で見合う事数秒。
 とりあえず叫ぼうと口を開いたフェリシアーナよりも早く、男がにこりと笑っていった。

「もしかしてこの家、自分がこうたん?」
 
 そのあまりの人懐こい笑顔に、思わず毒気を抜かれて、開けた口から「はぁ」と答えると、男はさらに陽気な笑顔をみせて、
「そーなんやー!こんな可愛えぇ子がご近所さんとか、ラッキーやんなぁ。あ、俺アントーニョ。アントーニョ・フェルナンデス・カリエドや。よろしくなー」
 と手を振ってみせる。

「はぁ・・よろしくお願いします。私のことは、フェ・・フィアナって読んでください。・・・もしかして、この家の掃除とか、して下さってたんですか?」
 でなければ、いくら近所とはいえ空き家に慣れた様子で入ってくる意味が分からない。
 しかしフェリシアーナのその疑問に、アントーニョはあっさりと首を振った。

「えーとな、ここ、昔錬金術師が住んでてな、釜とか良いのがあんねん。せやから、勝手に。かんにんなー」
 これからは自分ちのショボイ釜で錬金やるわー。

 その内容はもちろん引っかかったが、更に気にかかった単語に、フェリシアーナは問い返す。

「錬金術?カリエドさん、錬金術できるんですか?」
「カリエドさんとかこしょばいなぁ。兄ちゃんでええよ、兄ちゃんで。あと敬語もいらんよ。この街じゃライセンスさえあれば錬金術やっていい事になっとるからな、小遣い稼ぎにみんなやっとるんや」 
 その「稼ぎ」の単語に、フェリシアーナの瞳が光った。

「えーと、じゃあトーニョ兄ちゃん。錬金術ってかせげるの?覚えるの難しい?本気でやったらどのくらい稼げるかな?」
 立て続けの質問にアントーニョはやや身をひきつつ、素直に答える。
「ライセンスとるの自体はそんなに難しないで。上達は本人のやる気次第やけど・・・一応、錬金術だけで飯食っとる奴もおる。錬金術で稼いで豪邸立てたっちゅーおっさんもおるけど、レアケースってやつやな。あ、ちなみにお金とか錬金するのはアウトやで」
 説明を聞きながら、フェリシアーナはふむふむと頷いた。そして、

「アントーニョ兄ちゃんにお願いがあります!私に錬金術、教えてくれない?ライセンスのとり方とか、基本的なところだけでもいいから」

 母に教わった、「並大抵の男は断らないお願いポーズ(注・相手を選んですること)」を決める。
 きゅ、と握りしめた両手を胸のあたりにおき、上目遣いで、首の角度は斜め23度。
 ちなみに面倒な相手にやるとストーカーと化す危険があるので要注意だが、目の前の男はそんな陰湿な事に走るタチには見えない。自称するとおり、「兄」的ポジションにぴったりな雰囲気を醸し出した男は、フェリシアーノのお願いに、あっけないほどあっさりと頷いた。

「えぇよ〜!こんな可愛ぇ妹分とか、役得やんなぁ。俺で良ければ喜んで!ちょぉまっとき、色々本とか持って来るわ。ライセンスは子供でも取れるからな、フィアナも心配いらんで」

 太陽のように笑ったアントーニョは、それからすぐに色々と錬金術の基本を教えてくれた。
 足のつかない、比較的割のいい仕事を身につけようと気合十分のフィオナは、基本を2日でマスターし、引っ越して三日目にして、めでたくライセンスを手に入れた。

 
 材料さえあれば、あとは引きこもってても出来る仕事。
 丁寧に作ればいい物が出来るし、いいものが出来れば高値で買ってもらえるという。

 なにより、新しくはじめる「誰にでも出来る」仕事だからこそ、それを作ったのが「フェリシアーナ」だとはバレにくい。
 つまり、足がつきにくい。


 これ以上の仕事があるだろうか、いやない!


 こうして、三年でどこまで稼げるか、フェリシアーナの錬金術生活が幕を開けたのだった。


 →次話


 兄ちゃんは金属アレルギー()。
 次あたりドイツさんが出てきます。

 13.08.15 伊都