「寒い!さむいさむいさむいー!!」

 暖房のきいた医局へ駆け込んできたイタリアは、扉を開くなりそういった。

「なんだって学食だけ廊下で繋がってないのさ意味わかんないよ!頭悪いってぜったい!!」

 そういいながらごそごそと手持ちのビニール袋をあさるイタリアの後頭部を、後ろから伸びてきた手が掴む。


「悪いのはお前の頭だろ。入り口で立ち止まるなイタリア」

 茶色の頭をぐい、と押しのけ、医局へ入ってきたのは、水色の術前着を身につけた、長身の人影。
 頭を捕まれたままその声を聞いたイタリアの顔が、ぱぁ、と明るくなった。


「あ、ドイツ!あのね見てみてこれ〜!パンダのマーチ冬季限定イチゴミルク〜☆」
「・・・・・お前が限定の言葉に弱いのは知ってる。そしてその口の利き方が既にどうにもしようがないことも、な」

 本当に、自分の指導担当医をつかまえて、この口の利きようで、よくもこれまでの研修期間を乗り切ってこられた物だと思うと、不思議でならない。
 まぁ、それがイタリアのイタリアたる由縁なのだろうが。


「?ドイツ?ココア入ったよー はい、これドイツの分ね。ーー飲んでいく時間はあるでしょ?次のオペは二時からだよね」
「・・あぁ、ありがとう。しかしお前もそろそろ準備しとけよ。患者の病態はもちろん分かってるだろうな?」

 カップをうけとりながらそう訪ねると、相手はパンダの形のスナック菓子を手に、ふと真剣な表情になる。

「えっとたしか、食道癌で、事前の内視鏡検査のときにだした病理標本ではsquamous cell carcinoma って出てた」
「進行度は」
「100番代のリンパ節にはどこも転移してないハズだから、早期。病変をきちんととったら助けられるよね」
「・・・そうだな。しかし開けてみたら転移が見つかるかもしれん。楽観はするなよ、お前得意だろ」

 ちらりと見ると、なんのこだわりかはさっぱり分からないが、パンダの両耳と手足だけをかじり取ったイタリアが、多少唇をとがらした。

「わかってるよ。助けられる人は全力で助けたいもん。でもね、」


「俺はドイツを信じてるから、この人はきっと助かると思うよ。ドイツはすごくすごく頑張ってるから、患者さんも、看護師さんも、一緒にオペ室に入る人もみ んな、ドイツを信じてるよ。だからね、」



 
 助けられなかったのは ドイツだけのせいじゃないよ。




 そう、小さく言われたとたん、小さく、本当に小さく、ココアの表面がゆれた。

「イタリア、」
「まぁ要するに、俺はドイツが大好きだってはなしになるのかなっ」

 一瞬その前髪に隠れて見えなかった表情は、すぐにいつもの明るい笑顔になっていて。


「俺飲み終わったから着替えてくるね!ドイツ先に行ってる?」
「ーーーいや、ここで待ってる。一緒に行こう」

「・・・うん、一緒にいこう」




 

 生と死がせめぎ合う、手術室という戦場へ。

 恐ろしい事には変化はないけれど、貴男と一緒ならきっと。



 私はもっとふんばれる。





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 あ・・あれー・・? 鴇さんのとこで病院パロをなさっていらして、調子に乗って独伊で書こうと思ったのに
 いつのまにか、シリアスに、なってる よ 。。

 外科って、自分の手技次第で、助けられる人をきちんと助けられたり、そうじゃなかったり、ダイレクトに帰ってくるので、ホントに怖いと思います。
 いや、医者ってみんなそうなんですけど、患者さんの身体に直接触れて傷つけたりするので、特に、ね。


 医学生ならまだしも、医者で明るい話とかは難しいな。。。ヾ(- -;)
 同級生な医学生パロとか書いて良いですか。(誰にきいてるんですかいとさん