「ドイツー!サッカーしよーサッ」

 カー、と続くはずだった言葉は、子音を失い「あー・・」という阿世音になってこぼれおちた。

 いつもどおりドイツの部屋の扉を開けた、イタリアの視線の先で。


 ドイツが、寝ていた。



 siesta



「うわーなんか珍しい・・・」
 気配に敏感な彼を起こさぬよう、恐る恐る近づき、ドイツの顔をのぞき込む。
 それもそうだろう、何時だってイタリアはドイツよりも早く寝て、遅く起きるのだから。
 付き合いは短い方ではないが、その寝顔をゆっくり見る機会など、ついぞ訪れなかった。


「にゃはー・・ドイツ睫毛も金色だぁ・・・」
 自分には無い黄金色が、いつも精悍な印象を与える瞳の代わりに、幾分幼いイメージを作っている。
 瞳を閉じてなお、ともすれば皺のよりそうな柳眉に、思わず苦笑した。

「ドイツってば俺と同じくらいの年のくせにしっかりしすぎだよー」
 起こさないよう、小さな声で、そうつぶやく。
 顔立ちだけではない。身長だって8センチも高いし、今は腕組みされている手も、自分のそれより大きくて・・・なでられると安心する。
 何となく、その手に触れて欲しくてーーしかし相手は寝ているので、自分から手を伸ばした。

「えへへ、ドイツの手おっきーい」

 そっと、起こさぬように、触れたつもりだったのだ、が。


「ーーーイタリア?」


 上から降ってきた低音に、どきりとして振り仰ぐ。

「あ・・・ドイツ、」
 
 双璧の碧に、ごめん起こしちゃった?と言おうとしている自分が映っているのが見えた、次の瞬間。


 ふ、と。 見たこともない柔らかな顔でドイツが微笑んだ。


 それにぽかん、と見惚れていたイタリアの腕が、ぐいとひかれ、




「へ」



 唇に、柔らかな触感。


 感じたのは一瞬だったけれど、それは、まぎれもなく。


「ドドドドドイツ!?」

「ーーーーここにいろ」

 
 動揺しまくった自分とは対照に、ドイツは静かにそう言って、



 イタリアの胸に頭を預け、



 また、寝た。









「・・・・・・・・・えっと、あの、その、ようするに?」


 寝ぼけ、て、たの、かな。


 えでもじゃぁ俺じゃなくて誰かと間違えてしたのかな、あでもちゃんと一回俺の名前よんでくれたし俺だって分かってたよねけどなんでドイツがいきなりキスとか挨拶でもあんまりしてくれないのにいや嬉しいけどーーー嬉しい、け、ど・・?


 元来悩むことの嫌いなイタリアが考える事を放棄するまでに、そう時間はかからなかった。


「ま、いっかー。俺ドイツ好きだし。いやじゃなかったし。起きたらもっかいしてくれる、か な・・」


 言葉の最後をあくびに混ぜて。


 ドイツの頭を抱えたまま、机によりかかり、イタリアは目を閉じた。



 起きたときに目にするのが、自分の好きな黄金色というのは、悪くない。


 
 
 それはドイツの家での、珍しく静かな午後の、珍しい出来事。




 おしまい。



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 あー・・・・・・。日本人特有の気の抜けた声をだしてみましたよもです。
 やっちまったなぁ・・・・。という感じがひしひしとしています。
 実は寝起き漫画はドイツのコレの方が早く思いついたのですが、イタリアのアレの方が絵にしやすかったので早くアップになったのでした。 これ漫画で描くって言ったら相当面倒だよ私。とか思ったので、ここは文で。文才とかないけどさ!(げはっ!

 ちなみにコレのイラストもありまするよー。
 ふつーにちゅーとかしてるんで好きな人のみご覧クダサイ・・・。背景とか描けませんヘタレですから。

 メルヘンっつーかリリカルっつーかそういったモノが大好物な伊都でした。
 
 ブラウザ閉じて戻ってビッテ☆